
竹田市歴史文化館・由学館 リニューアル

概要
大分県竹田市の中心市街地は中世に端を発する山城「岡城」の麓に築かれた旧城下町です。その都市構造は、近世に施された町割りがほぼ完全に残存する稀少なものであり、町並みも静かで落ち着いた風情をよく保っています。
「竹田市歴史文化館・由学館」は、国史跡「岡城跡」に関する観光交流機能[岡城ガイダンスセンター]と、施設の根幹となる博物館機能[特別展示室ちくでん館]を再整備し、岡城跡、城下町だけでなく竹田市一帯を「歴史・文化芸術の里」として再構築する「再生まちづくりプロジェクト」の拠点施設です。
今後のまちづくりの基盤となり、竹田市にしかない歴史的蓄積とそこに育まれてきた文化と風土の価値を将来に向けて再生していくための「市民と行政の意思の要」としての役割も担います。
課題/テーマ
- 田能村竹田の南画、旧岡藩中川家ゆかりの史料、岡城跡などの文化財や歴史資産を適切に守りながら、その価値を町に向けて、市民に向けて開くこと
- 市民の居場所となって、市民同士の、また市民と旅人との豊かな交流や出会いを生みだすこと
- まちなかの回遊をいざなうことによって、小さいながらも人間的なスケールと独自の風情に恵まれた旧城下町全体の魅力と価値を再生する拠点となること
旧城下町の再生に向けて、自ら事業にチャレンジする若者や、竹田市の将来を思い案ずる多くの市民に、希望を示せるかどうかが、今回のふたつの施設の整備に問われました。竹田市が培ってきた歴史資産・文化財と旧城下町のポテンシャルを開花させ、次世代の竹田市のまちづくりの土台になるような施設が強く求められました。
空間ソリューション/解決策
このプロジェクトは隈研吾建築都市設計事務所とのJV案件であり、城下町の中に二つの施設を同時に設計、施工していくものでした。プロポーザルでは旧城下町の特性を建築の中に機能・性能・意匠として、分かりやすく具体的に表現。また、展示の方向性は、竹田市の貴重な文化財などの観光資源を最大限利用した提案が受け入れられました。
竹田市歴史文化館・由学館では、来訪者が竹田市の新しいミュージアムを起点に町を回遊させる仕組みとして「町まるごと博物館の考え方」を軸に展示構成・展示アイテムを計画。
最新の映像技術を利用した多彩なコンテンツ、調査に時間を費やし細部まで石垣の復元をした岡城模型、文化庁とこだわってつくった国の重要文化財「サンチャゴの鐘」の特別展示室、漫画家や書道アーティスト、大分芸術短期大学や熊本大学の有識者の先生方の参画など、開館後に話題になるよう興味深い要素をたくさん盛り込みました。施設づくりを通じた地域再生で一番大切なことは、地域の人たちに施設が愛されること。この施設は設計段階から地域の人たちに愛されている観光拠点であり、これからが楽しみな施設です。